肺がん
概略
マイクロ波治療は電極針を癌に刺し、2450MHzの電磁波を発生させ周辺の癌を約150℃前後の高温で焼却する方法です。原理は水の分子を振動させ熱を発生させる電子レンジと同じと理解していただければよろしいかと思います。
ラジオ波治療はやはり同様に電極針を癌に刺し460KHzの電磁波を発生させ、対極板に向かって通電させます。この電磁波が癌組織に衝突しジュール熱が生じ、約60~90℃の熱で癌細胞の壊死を引き起こさせる方法です。 どちらを選択するかは癌の大きさ、位置などにより決定します。
適応
- 手術不能な癌(ステージⅢB以上)を縮小させ延命を図るための姑息的治療
- ステージ0~ⅠAの早期癌でかつ転移が無い75歳以上の後期高齢者の根治治療
- 何らかの合併症のため縮小手術で終わり、局所再発が確実と病理検査で診断された患者の再発予防の追加治療
- 癌が多発している患者のコントロールのための治療
- この治療は原則的に肺野末梢に発生したものに限定
方法
現在は多くの場合、全身麻酔をかけ(痛みをとるのみならず、呼吸によるCT上の癌の位置の変動を無くすため)、CT室で行います。CTガイドデバイスを用い癌を正確に捉え確実に電極針を癌に刺します。CTで確認後電磁波を流し治療開始します。治療時間は麻酔時間も含め2~3時間で、一晩だけICUで厳重に術後管理をします。
合併症(2007.10.14現在)
気胸:自転車のパンクのように肺に穴が開きここから空気がもれ肺が押しつぶされますが、これはこの治療には必然的に伴うもので、70~80%に起こります。これに対してその場で、脱気をしてここから自己血を撒布して穴をふさぐ方法で治療し、その場で97%以上が治ります。35例のうち1例でトロッカー挿入という気胸の標準治療を行いました。
出血:癌病巣の近くにある血管が破綻して起きた例はありません。1例だけこの治療後10日目(退院し自宅で)に喀血し再入院した患者さんがいましたが保存的に輸液(点滴)で軽快しました。
肺嚢胞形成:肺に空洞が生じることです。肺気腫を合併し、ラジオ波治療を行った患者さんに多いようですがまだ2例の患者さんに発生しただけで断定的なことは言える段階ではありません。ここに膿が溜まらない限り治療は不要です。
利点
従来の治療より、低侵襲(体に負担が少ない)、廉価、癌細胞の組織型にかかわらず同じ効果が得られ(小細胞癌は除く)、治療日に入院し翌日からは安静が解除され、食事も摂れます。入院期間が7~10日と短期間で、術後の後遺症が殆どありません。
症例提示
1例だけ症例を提示いたします。
85歳の女性で糖尿病、高血圧、心不全、リュウマチ、慢性腎不全を治療するために外来通院していました。2002年10月に偶然、左上葉に早期癌(野口分類のタイプBに相当 papillary adenocarcinoma)が発見され、11月にマイクロ波治療を行い、2006年9月の最終CTで再発なく現在も健在で通院中です。
費用
自由診療のため55万円(消費税込み)
費用の詳細は電磁波治療、血液検査、レントゲン検査、輸液、抗生剤(3日間使用)、麻酔、食事、室料などすべてが含まれます。