ハートラインNo.7 花粉症とつきあうために

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昨夏は記録的な冷夏でしたね。おかげで春の厄介者スギ花粉の飛散は例年よりもずいぶんと少ないと予測されているようです。花粉の飛散が少なければ、花粉症の症状も軽くなると期待している方も多いことでしょう。とはいえ、一度症状が出てしまうと辛い数ヶ月をすごすことになります。本格的なシーズンを迎え、今回は花粉症の治療に使う薬剤を紹介します。 花粉症は、外からの病原菌などの異物の侵入に対してそれを排除したり無毒化したりするための「免疫」のしくみが、スギなどの特定の植物の花粉を異物と認識して過剰に反応して起こります。目や鼻の自覚症状が出るまでの間に体の中では三段階の反応が起こっています。 まず 第一段階では花粉(抗原)の侵入によって免疫のしくみが働き始め、次の花粉に備えて「抗体」を作ります。花粉症になる人ならない人の違いは、この抗体を作る反応が盛んに起こるか否かによって分かれるようです。  この段階に対しての治療は「減感作療法」と呼ばれるものがあります。抗原である花粉のエキスをごく少量ずつ繰り返し注射して体を慣れさせて行く方法で、数ヶ月にわたって何度も注射を繰り返す、とても根気のいる治療です。このため実際には花粉症に対して減感作療法を行うことはほとんどありません。 第二段階では再度侵入した花粉が抗体と反応し、免疫のしくみに関わる細胞から炎症を引き起こす刺激物質(ヒスタミンなど)が放出されます。この反応を阻止するのが、「抗アレルギー薬」に分類される薬剤です。主に内服薬として使用しますが、点眼薬や点鼻薬もあります。 第三段階ではヒスタミンなどの刺激物質が目や鼻の粘膜で炎症を引き起こし、その結果目の痒みやクシャミ、鼻水といった花粉症の症状が現れます。このヒスタミンによる反応を阻止するのが、「抗ヒスタミン薬」です。内服で使用されます。(前述の抗アレルギー薬の中にもこの抗ヒスタミン作用をあわせ持つものがあります)抗ヒスタミン薬は眠くなることでよく知られている薬ですが、近年発売された第二世代と呼ばれる抗ヒスタミン薬では、この眠気がずいぶんと改善されました。 第三段階が進み、自覚症状が出てしまった後には「抗炎症薬」を使用します。ステロイドホルモンが使用されますが、内服ではなく点眼や点鼻など炎症が起こっている局所で使用します。 さて 花粉症を「火事」に例えておさらいしましょう。花粉は「火種」、自覚症状が出ているときは「火災」の状態です。「減感作療法」は耐火構造の家づくりのようなもの。火災が発生してからでは間に合うわけもありません。「抗アレルギー薬」「抗ヒスタミン薬」は防火対策、火種からの燃え広がりを食い止めます。「抗炎症薬」は消火作業、火元をしっかりおさえます。 花粉症治療の重要なポイントは、防火対策の抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬を使用するタイミングです。火種(花粉)の飛び回る時季には、出火する前(症状が出る前)から時季が終わるまで、しっかり防火対策をしましょう。そして火種が体の中に入らないように、マスク・メガネをする、外から帰ったらうがいをするなどの「火の用心」も大切です。 今年の春が、皆さんにとって素敵な季節となりますように・・・

今泉圭子

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