コロナ変異株とは? ワクチンは効かないのか?

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100年ぶりのパンデミックに襲われ、昨年は新型コロナに翻弄され続けた1年でした。昨年の正月はこのような世界になるとは誰も予想しなかったと思います。
まさに人類の英智が問われる1年でしたが、素晴らしいことに普通10年近くかかると言われていたワクチンが、1年以内という極めて短期間で開発製造され、昨年末にはいくつかの国々で接種も開始されました。日本では早ければ2月には接種できそうだというニュースにほっと胸をなで下ろしています。しかし、同時に昨年末頃からコロナ変異株が英国を中心に出現し、世界中に伝播し始めているという報道にさらに驚かされています。

このコロナ変異株とはどのようなウイルスなのか、ようやく接種が開始されたワクチンは変異株に効果あるのだろうか、最近の情報をもとに解説したいと思います。

まずウイルスの変異とは?

一般的にウイルスは流行しながら、常に少しずつ変異することが知られています。インフルエンザ感染に対するワクチンは毎年変わりますが、これはインフルエンザウイルスが常に変異しているため、その変異にあわせてワクチンを作成しないとその年の流行ウイルスに効果が少ないからです。
新型コロナウイルスは約3万塩基(コード情報と考えて下さい)により構成されたRNAウイルス(この塩基やRNAなどの用語はこの際わきに置いておきましょう)で、この塩基が約2週間で1カ所程度の速度で変異していると考えられています。この変異速度はインフルエンザウイルスの変異速度の50%、AIDSウイルス(HIV)の約25%なので、かなり遅いようです。毎年のインフルエンザ感染でわかるように、通常このようなウイルスの変異は感染力の強さや症状の変化(重症化)に変化を及ぼすことは少ないようです。この計算からすると昨年1月に中国でみつかった新型コロナウイルスと比較して、現在のコロナウイルスは約20~30箇所の変異が蓄積されていると推測されます。実際英国で確認されたコロナ変異株(VOC202012/01)では29の変異が見つかっていると報告されています。
この変異がウイルスの感染や重症度と関連する部位でおこっていなければ良いのですが、残念ながら現在の変異株はヒトのウイルス受容体(ACE2: ふらふら日記2020年5月6日ブログ参照)に結合するスパイクタンパク(Sタンパク)に変異(8個程度)がおきており、この変異によってACE2受容体に強固に結合すると分かってきています。したがって、この変異株は感染性が60~70%増加しているといういやな事実が判明しています。しかし、重症化に関与するかどうかはまだ不明で、現在のところ否定的です。

なぜ変異ウイルスが出現し、増加しているのか?

ウイルス変異は約2週間に1カ所程度起こります。もし免疫が低下している高齢者の患者に感染した場合には、より長期間持続感染しており、この間に変異ウイルスが生じる可能性が高くなります。さらにこの変異ウイルスは感染性が増加しているため、短期間で広まっていると考えられます。

変異ウイルスに対してワクチンは有効か?

現在開発が最も進んでおり接種も開始されつつあるワクチンは、ファイザー社・ビオンテック社のmRNAワクチン、モデルナ社のmRNAワクチン、そしてオクスフォード大・アストラゼネカ社のアデノウイルス型の3つのワクチンです。この3つのワクチンはいずれも、コロナウイルスの表面に突き出しているSタンパクを人の細胞に作らせ、Sタンパクに対する免疫反応を誘導してウイルスの中和抗体を作ることで、人体を感染から防御する共通のメカニズムをもっています。Sタンパクは大きな蛋白なので、これに反応する免疫細胞から産生される中和抗体は、一部分の変異に対しても十分にカバーでき、感染予防効果が期待できると考えられています。
しかし、既感染者やワクチン接種者がこの変異株に対して有効に反応するか確かめる必要があり、1~2月中には結論がでると思います。一方、驚異的な医学の進歩により、6週間で変異株に対してワクチンを改造することが可能だと述べられており(独ビオンテック社)、大変心強い限りです。

集団免疫による感染予防の期待

コロナ感染者の周囲に、コロナに対する免疫をもっている人が多くいれば(理論的には6割以上)、コロナウイルスは周囲の人に感染できないため、流行は広がらなくなります。このような状態を集団免疫といいます。ワクチンによってこのような集団免疫が達成できるかまだあきらかになっていませんが、世界的にワクチン接種が進んでいるので今年の春頃までには情報が得られると期待しています。

そのような状態になって日本でウイルスに打ち勝った証としてオリンピックを開催できるでしょう。いや、そのようになってもらいたいと切望しています!

浅草新仲見世にて 天然鯛焼・・・なにが天然なのか不明だが・・・(2019年冬)  早くコロナが終息して、人混みがまた戻ることを願っている

スイス チューリッヒ大学小児科医のデービッドからしばらくぶりにクリスマスメールが届いた。彼と奥さん(エリカ)は昨年の3月にニュージーランドに旅行に出かけたが、コロナロックダウンに遭遇し、2ヶ月以上足止めを食ったようだ。何とかアパートを確保し、最低限の生活で、帰るどころかまったく動きがとれなかったとのこと。 写真は2010年にスイスを訪れ、ヨーロッパ最大のライン滝をバックにデービッド夫妻を撮影

 

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