コロナ狂想曲も2年目に突入した。
病院職員は院内では食事以外はマスクの装用が義務づけられており、食事中の会話も禁止されているので、職員同士の会話も極めて少ない状態が1年以上続いている。入院患者の面会も原則禁止されており、入院治療というもっとも家族のサポートを必要としているときに面会が制限されている。さらに看護師をはじめとする医療従事者にとっても、クラスター発生を厳格に防ぐ感染対策が必須となっており、患者だけでなく医療従事者にもストレスフルな毎日となっている。
鬱屈した毎日の生活に一縷の光明を提供してくれるのはワクチン接種が開始されたことだ。これで長いトンネルから抜け出ることができるか、と少なからずの国民が希望を抱いている。しかし非常に高い接種率を示すイスラエル、英国、米国などに比較すると、あちらはマラソンのほぼ30〜35キロ付近に達してゴールが見えてきているのに、日本のワクチン接種はまだスタート地点に立ったばかりだ。
接種予約券が届いたので予約しようとしたら数分で予約が満杯、あるいは電話が通じないので、ネット予約をしようとしてもわからず、役所の担当部署に出かけてそこで担当者にネット予約をしてもらった・・・等々。どこの発展途上国の話だ? DX推進政策、デジタル省、ワクチン担当大臣指名、等々、今では遅々と進まない政策に期待がしぼんでしまい、シラケる話題になってしまっている。
朝、昼のテレビのワイドショウでは「感染症専門家」と称するコメンテーターが毎日のように出演して、「感染爆発」「第4波」「変異ウイルスの怖さ」「医療逼迫」「医療崩壊」・・・などと自粛生活で朝からテレビを見るしかない視聴者の恐怖を煽っている。彼らは専門家とはいうが、普段は一体何をしているのだろうか。まるでテレビタレントのように毎日テレビに顔を出して、それが仕事になっているようだ。視聴者はこのようなタレント専門家?やキャスターの怖い話から情報を得るしかない。外出を制限され家に閉じこもっている高齢者たちは、毎日のようにメディアが煽っている恐怖にさらされており、怖くてたまらない。自分たちの命を守ってくれるのはワクチンしかない!、しかしワクチン「打たない派」、あるいは「待て派」の専門家が、通常5-10年かかるワクチンが1年で接種を始めるのは安全性が担保されてないので慌てて打たなくても良い、あるいは安全性の情報が集まってから打てと、どちらを信じて良いのかワクチン狂想曲になりつつある。
現在の感染予防率90~95%のワクチンは、接種する機会が廻ってきたらすぐに打つべきだと思う。ただし、自分への感染はある程度予防できるが、他人に感染させないかどうかはまだわかっていない。したがって、ワクチンを打っても手洗い、マスク、3密を避ける、など今までの感染予防は続けなければならない点の理解は重要だ。
このような情報の氾濫が社会を混乱させることを、Information(情報)+Epidemic (流行)=Infodemic(インフォデミック)と呼ばれるようになった。このようなインフォデミックを修正するのは、米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)疾病予防管理センターのような機関だ。国内外の人々の健康と安全の保護を主導し、健康に関する種々の決定根拠となる信頼できる情報の提供と各種活動の中心的存在となっている。日本でもCDCに相当する機関を創るべきだという意見が多く出されているが、いわゆる「泥縄・・泥棒を捕らえて縄をなう」で、案の定、どの省庁に設置するか省庁間の綱引きがはじまりまとまらない。なんとかしてほしい・・・!
不思議に思うのは、コロナ禍において日本の医療行政を担っている厚労省の影が極めて薄いことだ。感染症対策分科会の尾身会長は頻繁にメディアに登場して意見を言っているが(彼には行政のコロナ対策を決める権限はない!)、厚労省のお役人がまったく出てこない。厚労省の医療系のトップである「医務技監」が行政のコロナ対策の責任を担っているはずなのに、一度も情報発信がなくインフォデミックの修正もしていないのだ。
今年中に全国民にワクチン接種が終了するのだろうか・・・すべては海外の製薬会社からのワクチン提供に頼っている。ワクチンを購入できるかどうかの「チカラ勝負」、すなわち資金力にかかっている。ワクチン接種で世界のトップを走っているイスラエルは通常の2倍の金額で仕入れ、しかもファイザーにおそらく接種後の患者データを提供するという見返りまでして優先的にワクチン供給を受けているようだ。
日本にこのようなチカラ勝負ができるリーダーがいるのだろうか。危機管理はリーダーの力量にかかっているのに・・・と憂いている毎日だ。