パリの薫りがするジャズバイオリン

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引っ越しの際の整理は常に頭を悩ませるもので、仕事の間にその時間をひねり出さなければならない。私が優先するものは音楽と絵画で、特にオーディオやスピーカーは引っ越しでもっとも不具合が出やすいので自分でやらなければならない。自慢の自作スピーカーは和歌山市内で引っ越しするときに、「こんな大きなものをどこに置くの?」という一言で、泣く泣く処分!(引き取ってくれる人もなし) 愛聴していた英国製の真空管アンプは藤沢から鎌倉に引っ越したときにあえなくダウン。片耳の突発性難聴だ、なんと片方からしか音が出なくなってしまったのだ。今のご時世、真空管アンプを修理できるところは非常に限られており、このような修理屋は車で持参できるような近隣にあることが滅多になく、この時もネットで探して厳重に梱包して送り出し、1ヶ月後に無事に生還した次第。今回の引っ越しを決めたときに、真空管アンプの悪夢がよみがえってきて、泣く泣く引っ越し前に知り合いのオーディオショップに引き取ってもらった。今書斎ではこのショップに紹介してもらった小型だがこだわりのアンプとスピーカー(引っ越しでも大丈夫?)が良い音楽を奏でている。

フィルムカメラがデジタルカメラに総入れ替えされたように、最近の音楽はアナログのLPレコードがすたれてCDに替わり、さらにSpotifyやApple Musicなどのデジタル配信が主流となっている。私も音質の良いと言われているFLACフォーマットの音楽ファイルを、外付けのSSDメモリーにすでに100ギガバイト以上保存しており、ミュージックサーバー(DELA)とネットワークプレーヤーLinnによるデジタル音楽を楽しんでいる。しかし人間はそう簡単にはデジタル洗脳されないのだ! しぶとくフィルムカメラを使い続け、その魅力を発信している写真家が少なくないと同じように、LPレコードも見事に復活しており、最近ではCDアルバムと同時にLPレコードも売り出されること多い。

引っ越しして2週間を経過し、段ボール箱に囲まれた生活からやや解放され、家中に飾った絵画を見ながら、LPレコードを楽しむのは至福の時だ。保管しているLPレコードを整理していくと、こんなLPあったかな?といううれしい驚きもある。いつ、どこで購入したのかまるで覚えていないのだ。

紹介するアルバムもその一つで、盲目のピアニスト、ジョージ・シアリングとバリのジャズ・バイオリニスト、ステファン・グラッペリの共演だ。1974年4月11日録音となっており、なんと今から43年前の作品。ステファン・グラッペリは1908年にパリに生まれ、90歳近くまで演奏活動を続け、この「The reunion」は第2次世界大戦でイギリスからフランスに帰れなくなったときに親しくなった英国出身のシアリングと共演したもの。グラッペリは主にジャズ畑で活躍し、多くのジャズミュージシャンと共演しているが、世界的チェリストのヨーヨー・マとともにクラシック音楽も演奏しており、その音楽ジャンルは非常に広い。私がグラッペリのジャズバイオリン(当然LPレコードだったと思う)を聴き、虜になったのは高校生のときだ。今まで多くの作品を聴いてきたが、その優美で哀感あふれるが、ときに明るくポップな演奏からパリの薫りを感ずることが多い。私のお気に入りのアルバムは多いが、本作「The Reunion」、「Plays Cole Porter」、ハーモニカ奏者のツース・シールマンとの共作「Bringing It Together」などがお薦め。

左がGorge Shearing, 右がStephane Grappelli

セーヌ川夜景(パリ)2012年3月撮影  ベルギーで開催されたワクチン会議後に、小雪が舞う中を寒さにふるえながらセーヌ川ほとりを散策

-ふらふら日記