脳神経外科とは、いわゆる中枢神経(脳脊髄)と一部の末梢神経の疾患及び外傷を扱っている医学の分野で、診療科の一つです。
脳腫瘍、脊髄腫瘍、脳卒中、頭部外傷、などの治療を行っています。神経内科などと重なる分野もあり、協力して診断治療にあたる機会も多くあります。
脳卒中は3種類
脳血管障害のうち、脳梗塞、くも膜下出血、脳出血は三大脳卒中といわれています。
脳梗塞
三大脳卒中のうち最も多いのは脳梗塞で、全体の7~8割を占めます。これにはラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞の3病型がありますが、かつて大半を占めたラクナ梗塞は減少し、現在は心原性脳塞栓症とアテローム血栓性脳梗塞が増加しています。
くも膜下出血
脳卒中のうち、くも膜下出血は最も少ないですが、生命予後への影響は非常に大です。若年者に多く、女性の発症率は男性より2倍近く高く、日本での発症率は欧米より高いのが特徴です。喫煙、アルコール多飲、高血圧が重要な危険因子といわれていますが、遺伝的要因も大きく、二親等以内に発症者を持つ人の約4人中1人に脳動脈瘤が検出されています。かつて、発症者の3分の1は死亡し、3分の1には後遺症が残り、これに対する早期発見、予防が重要視されドックが普及したといわれています。
脳出血
以前、脳出血は脳卒中の中で最も死亡率が高いといわれていましたが、1960年代以降、大幅に低下しました。現在、脳出血は全体の2割程度ですが、いまだに問題は残されています。危険因子としては高血圧とアルコール多飲が重要であることがわかっています。欧米人と日本人でアルコール代謝酵素の遺伝的背景が異なるため、日本人は少量飲酒でも悪影響となることがあります。
脳卒中の治療
脳卒中の治療方針として経過観察を行うか、点滴または手術的治療による開頭によるクリッピング術と血管内手術によるコイル塞栓術があります。
手術に使うクリップ
当院で行っているクリッピング術とは脳動脈瘤治療の最も一般的な手術です。
全身麻酔をかけ、頭皮を切開し、頭蓋骨をはずし、顕微鏡を使って、脳動脈瘤に接近します。
動脈瘤に洗濯ばさみのような「クリップ」をかけることにより、脳動脈瘤に血流が入らないようにし破裂を予防します。
クリップの種類は症例に合わせて数ミリから十数ミリまで様々な大きさがあります。
材質はチタニウム合金で、生涯体内に残っていても全く問題ないものとなっております。
検査の重要性
脳動脈瘤は一般成人の約5%が有すると言われており、比較的頻度が高い疾患です。予てよりくも膜下出血という予後不良な状態を呈しうるとして恐れられてきました。
くも膜下出血は一旦発生すると、現在の進んだ医療でも約2/3が死亡又は後遺症を残すという重篤な病気です。
未破裂脳動脈瘤とはこれが何らかの検査で、破れる前に見つかったものです。
近頃、脳ドックの普及、CTやMRIなどの普及により、発見率が飛躍的に高くなってきています。とても恐ろしいくも膜下出血を予防する目的で積極的な治療(開頭して小さなクリップをかける方法や血管内より治療する方法)が勧められてきました。しかし大きさ形などにより破裂し難いと判断され、 経過観察する場合も数多くあります。CTやMRIによる動脈瘤の形状でどの治療が一番適しているかお示しできると思います。