中国で医者は人気職業か?
今回はガイドをしてくれた中国人の王さんに直に聞いた患者側からの医療事情を紹介しよう。
中国の医療事情その2で書いたが、中国の一流病院で診察を受けるのは極めて難しい。さらに大学病院の教授や総合病院の部長クラスの医師に診察してもらうのは宝くじに当たるようなものとのこと。したがって、このような診察を受ける際にはお礼(日本ではほぼ死語になっている)が常識となる。これは袖の下ではなく、ほぼ公然と支払うようである。金額はどのくらいかと聞くと役職の地位にもよるが、下限は1~2万円程度のこと。このように話しをすると中国の医師は大変恵まれており、医学部入学はさぞ狭き門と考えるかもしれないが、ところがどっこいである。
2018年現在で中国の医師数は約260、日本の医師数が32万人で、それぞれ人口10万人あたりの医師数は中国が190人、医師不足といわれている日本が270人と、中国は圧倒的に少ない。したがって、中国医者は非常に多くの患者を診察、手術をしなければならず多忙を極めるが、その割に地位は高くないのである。医師や看護師の給料は一般のサラリーマンよりも低く、もっとも低水準な職業の一つだそうだ。
10年前ほどに中国医師協会が行ったアンケートでは、7割以上の医師が自分の息子、娘に医者になってほしくないと答えたとのこと。ちなみに診察お礼をもらえる医師は全医師の1%前後であり、中国の教授クラスに上り詰めるには、学問的業績に加えて、いわゆるコネ(共産党)や海外留学などが必須のようで、これまた艱難辛苦を乗り越えなければならない。したがって、日本とは真逆の現象で、現在の中国では医学部希望者が減少しており、地方の医学部などでは定員割れも珍しくなくなってきているとのこと。大学によっては医学部入学試験のハードルを下げて入学者を増やそうとしているところもあると聞く。
一方で、日本の医師国家試験の合格率は95%を超え、医学部卒業生をできる限り医者にして、医者不足を解消しようとしているが、中国では医者不足にかかわらず、合格率は50%を超えていないようである。これは医学部卒業生のレベルが低いわけでなく、国の方針として医師になるハードルを高めに設定して、質を担保しようとしているとのこと。とくに習近平主席になってからその方向が著しく、医療に対するてこ入れも強いと聞く。この彼我の違いが将来の医療にどのような反映されるのか、怖いところである。