医療法人 慶友会

中国の医療事情その2 ~入院時の質問にびっくり~

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入院時の使用薬剤は外国製、中国製のどちら?

2019年11月に上海に隣接する蘇州市で開催された中国小児耳鼻咽喉科学会に招かれて、上海と蘇州を訪れた。学会長は中国でも5本の指に入る大きさおよび医学レベルを誇る上海の国立復旦大学医学部の許正敏教授だ。復旦大学医学部附属病院は約5000床超のベッド数を有し、1日の外来患者数は1万人を超えるとのこと。

中国の病院は日本と同様に公立および民間があり、現在公立病院の方が施設数や病床数が多く、医療の質も高いようである。病院はその医療レベルから三等級に分類されている。大学附属病院などは医療レベルがもっとも高い三級に分類され、一級病院はレベルがもっとも低い。民間病院で医療レベルの高い三級と二級病院に分類されるのは全体の1割に満たないため、一般市民はよりレベルの高い公立病院を受診することが多いようだ。そのため病院の多い上海市では民間病院をさらに星付きでランク付けしており、150の星付き民間病院(全体で約400施設のうち星が付くのは半数以下)のうち最高位の四つ星病院は7施設、三つ星病院は33施設しかない。

どの国の患者さんもより良い病院で医療を受けたいと願っており、大都市の大学病院や総合病院志向はどこも同じで、中国はその巨大な人口から病院診療券(診察受付チケットの発行)の獲得合戦は半端なものではないようだ。地方在住の患者さんおよびその家族は数日前から都会に出てきて、すぐに病院に行くのではなく星の数ほどある診療券発行代行屋に出向く。代行屋は朝の3,4時に病院受付に並び診療券を手に入れる。しかし、それでも診察を受けられる患者さんはラッキーで、一日の外来患者が1万人を超えるような大学病院や総合病院では、物理的に1日の診察人数に限界があるため、半数以上の患者さんが受付の段階でその患者さんの出身地方の病院リストが渡され、そこに行くように指示されるとのこと。

入院した際の患者への質問事項を聞いて、びっくり! 入院時に使用する薬剤を患者が決めなければならない。つまり外国製薬剤(一般的に高価である)か中国製薬剤(安価である)のどちらを使用するか、と聞かれる。王さんいわく、多くの中国人は中国製を信用していないので、自分あるいは家族の病気に使う薬は高価でも信用できる海外薬品を選ぶとのこと。ほぼ同レベルの医療をどこでも(フリーアクセス)保険診療(国民皆保険)を受けられる日本を、中国の人々は羨望のまなざしで見ているのである。現在日本の健診や医療を受けるために日本を訪れる中国「医療インバウンド」が急激に増加しているのは、このような中国の医療事情が反映されている。

東洋のベニスと言われる蘇州の山塘街(世界遺産)で運河巡りを楽しむ。イタリアのベニスと異なり、運河脇の家に下着が干されたりして、とてもドローカルだ。夕方は赤い提灯にあかりがともされ幻想的だ。

中国茶を目の前で淹れてくれて試飲できる上海豫園の茶店(ガイドブックに出ておらず、中国人の王さんに豫園の迷路のような道を連れてもらったので、もう一度行ってみてと言われてもほぼ不可能)その豊富な種類と美味しさに圧倒され、かなりの量を買い込んだが、未だに自宅でゆっくり楽しむ時間はなし。