医療法人 慶友会

新型コロナウイルスワクチン、治療薬最新情報1 ~敬老の日特集~

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毎日の感染者数増減の報道にやや疲れてきた感も否めませんが、スポーツ観戦やGo-Toトラベルに東京が解除されるなど、新型コロナウイルス感染防止のための種々の行動制限が緩められてきています。政府は感染をこれ以上抑えようとするのではなく、ウイズ・コロナで同時に経済活性化に向かう方向に舵をきったように思われます。しかし、ワクチンの国民への配布や有効な治療薬が一般に使える状態にはなっていない状況では、なかなか安心できませんね。

ワクチンは世界的にすでに政治戦略の手段となってきており、ロシアや中国は自国の非常に甘いルールで早期に認可し、発展途上国を自陣営に取り込むためにワクチン配布しようとしています。ロシアは8月11日に自国で開発した新型コロナウイルスワクチンを最終の第三相試験をスキップして、世界で初めて一般市民向けに承認してしまいました。このワクチンの臨床試験にはプーチン大統領の娘さんも参加しており、接種後発熱があったが、翌日には解熱し、高い抗体価が確認されたと報道しています。このロシアワクチンはソ連による人類初の人工衛星「スプートニク1号」にちなんで「スプートニク5号」と命名されており、プーチン大統領がワクチンという国民の健康を左右するものに支持率の向上と国家の威信をかけた危険な賭けのように思います。中国ではまだ完全に最終試験が終了していない中国製ワクチンを人民解放軍の兵士に限定して承認しています(まだ一般市民むけではない)。
一方ライバルである米国では11月の大統領選にむけてトランプ大統領は年内に配布できると宣言した後に、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)長官が全国民への配布は来年秋頃であると慌てて修正するなど、茶番劇を演じています。ワクチンは健康人に接種するため、その安全性には最大限注意を払うべきであり、いたずらに「世界初を競い合って、安全性をおろそかにする」ことは許されることではありません。このような非常に危険なワクチン開発の意味から、世界の医療界ではロシアの「スプートニク5号」ワクチンは“スプートニク・ショック”(初の人工衛星のショックとは真逆の意味で)と受け取られています。

新型コロナウイルス感染が毎年流行するインフルエンザ感染と同程度に捉えられるようになるためには、有効なワクチンおよび治療薬が一般に使えるようになることが必要でしょう。世界のワクチン開発競争でトップを走っている英国オックスフォード大学とアストラゼネカ社のワクチン大規模試験が、副作用(横断性脊髄炎)の疑いで一時中止との報道(9月9日)にはかなり心配しましたが、患者さんが早期に回復され試験が3日後には再開されたと知ったときは本当にホッとしました(しかし再開されたのは英国のみで、現時点で米国では中断されている)。さらに今日(9月21日)の日経新聞に、アビガン(富士フイルム)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として承認申請を提出し、年内に認可される可能性ありと報道されていました。厚労省が申請を受け付けるということは、受理される可能性が非常に高いと思われますので、本邦初のCOVID-19治療薬として早期に使えるようになるのは大変心強い進展です。

能面(小面)のできるまで(まだ未完成) コロナのステイホームのおかげで、ようやく目と口が開きました。