2023年正月の幸運な出会い パリの木版画家 ヴァロットン「黒と白」展

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昨年末にニューヨークの友人、ハワード・フェーデン (小児科医)に季節の挨拶メールを出したら(彼はユダヤ教でクリスマスは祝わないので、クリスマスの挨拶メールは出さない)、アメリカは大寒波に襲われており、彼の住んでいるバッファロー市ではすごいストームで1メートルを超える積雪があり、どこへも出られず、車も運転不能だという。救急搬送も一切ダメと大変な状態で数十人が亡くなり、恐ろしい、恐ろしいと嘆いていた。これは明らかな気候変動だと、恐怖の中で実感していると書いてきた。

バッファロー市はニューヨーク州の第2の都市で、五大湖のエリー湖に接しており、ナイアガラ滝観光の基地でもある。私たちの家族もニューヨーク州立大学医学部への留学で2年ほど住んだことがあり、冬の厳しさは経験しているが、ハワードは今までの記憶にはないほどの寒波だと驚いていた。

守谷の正月は打って変わって抜けるような青空だ。初詣はどこに行こうかと思案したが、最初の計画の浅草神社は息子達の反対であえなく撤回され、急遽地元の八坂神社とあいなった。TVニュースで浅草はインバウンドの観光客で溢れており、成田空港の検疫でも入国の中国人の大多数がコロナ陽性だったとのこと。日本は寒波ではなくまだオミクロン波に襲われており、海外、とくにコロナが爆発的に増加している国からの観光客が集まるような神社仏閣はさけてよかったようだ。

息子達がそれそれの住居、職場に戻ってしまうと、家は火が消えてしまったような静寂で包まれた。まだ正月休みが残っているので、何かアートに触れたいという気持ちがふつふつと湧いてきて、私の好きな東京の三菱一号館美術館に行ってきた。

パリで活躍したスイス生まれの画家、フェリックス・ヴァロットンの木版画コレクション、「黒と白」展だ。本美術館はヴァロットンの世界有数のコレクションを所蔵しており、実に180点近くが一挙に公開されていた。ハーフトーンやアウトフォーカスが全くない黒と白だけで創り出された世界は、デザイン性が際立ち、ヴァロットンの感性が観るものに圧倒的に迫ってくる。彼も日本の浮世絵から大きな影響を受けたようだが、黒と白の木版画の世界へ昇華したプロセスはとても興味深い。

「アンティミテ」(フランス語で親密の意味)の連作は極めて希少性が高く、この作品群は「黒と白」展の白眉と言って良い。作品のタイトルは、「狼狽」「信頼する人」「嘘」「もっともな理由」・・・と美術作品のタイトルとしてはやや異例だが、黒白の木版画と併せてみているとまるで小説の世界に引き込まれた感覚だった。

八坂神社で引いたおみくじは「大吉」だったが、ヴァロットンとの出会いは新しい年の幸運な「大吉」のおかげと喜んでいる。

「お金」
「愛書家」

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