下肢静脈瘤血管内治療

当院の下肢静脈瘤血管内治療

下肢静脈瘤は大変多い病気で、日本全国で1000万人ほどの人々が、悩んで治療されたり、そのままにされたりしています。その治療方法が近年、大きく変わろうとしています。それは傷のできない治療法の発達です。

当血管センターでは、昨年まで年間300名ほどの患者さんが、ストリッピングという静脈を局所麻酔して抜き取ってしまうという手術を受けています。また、それと同じくらいに数の患者さんが、泡状にした硬化剤を注入して静脈瘤を治す、フォーム硬化療法という血管内治療を受けています。

さらに昨年7月からは、当院でも高性能レーザーを使った傷のできない治療を開始しました。レーザー治療はすでに欧米では普及しており、当センター長が理事長をつとめる日本静脈学会でも早く保険適応になるよう努力してまいりました。理想的にはすべてのレーザー治療法(ただし、欧米やわが国で使われ、実績のある機器を使用)が一括して認められ、何十社もある製造会社や販売会社が、責任を持ってレーザー機器の安全性を確認しながら治療法を普及していくことが希望でした。

ところが、わが国の担当する省庁は、医療機器というものは長くても5年ごとにつぎつぎと変化・改良されていくという実情に合わすよりも、その機器の安全性、性能を十分時間をかけて(約10年)検討して、その機器に関してのみ使用を許可するという方法を採用しました。

その結果、われわれの予想よりもかなり早く進み、2011年1月1日よりELVeSレーザーという機器に関してのみ保険適応となりました。やや旧式となってしまうこの機器は、欧米ではすでに製造されていないにも拘らず、ドイツに注文して機器を取り寄せて保険内治療を行うということになったわけです。この問題は、デバイスラグ(読売12/16夕刊)としてわが国の医療機器審査体制に疑問が投げかけられています。

そこで当院では、とりあつかっている患者数が多いことや、患者さんにとっての選択肢をふやし、実情を十分理解してもらうことにいたしました。そこで保険適応にあった機器を用いたレーザー治療を本年2月より開始いたします。また、従来からの保険の利かない高性能レーザー治療も行います。高性能レーザー治療は、保険治療よりやや割高になりますが、治療費は最小限に抑えて、患者さんの要望に応えたいと考えています。詳しいパンフレットをご用意しましたので、是非ご相談ください。

静脈瘤のあまり太いもの、屈曲のひどいもの、潰瘍や湿疹のひどい例では、従来どおりのストリッピング術を採用していきます。さらに傷にこだわることから、レーザー治療で残った静脈瘤(特に下腿)には、フォーム硬化療法で対処していきたいと考えています。

みなさまのご理解とご協力をお願いいたします。

細かなご質問は、当センターの医師(全員が脈管専門医)にご相談ください。

 

静脈瘤のレーザー治療について

レーザー治療とはどんな治療法ですか?

静脈瘤のレーザー治療とはレーザーの熱によって静脈瘤内腔を塞いでしまう方法です。 拡張した静脈瘤血管を皮膚の上から針で刺し、この針を介して静脈瘤内 に細いファイバーを留置、このファイバーを介して照射されたレーザー光線で血管壁を破壊し静脈瘤内腔を閉塞させます。閉塞した血管はやがて繊維化が生じ【ひも状】となり、最終的には無くなってしまうのです。 この治療法は血管内治療法(血管の中から血管だけを壊す方法)のひとつで、人体への負担が少なく、治療後の日常生活への復帰も早いと最近注目されております。

どうしてレーザー光線で血管壁を破壊できるのでしょうか?

様々な波長のレーザー光線が治療に利用されておりますが、静脈瘤の血管内治療には800nmから1500nm波長のレーザー光線が使われております。 一般に発射されたレーザー光線は標的となる組織で吸収または散乱されますが、吸収されてはじめて熱エネルギーに変換され、標的組織を熱破壊します。波長の調整を行うことで標的となる組織を選択できるわけです。(図1↓)

どうしてレーザー光線で血管壁を破壊できるのでしょうか?

当院で使用している1470nmレーザー光線は、静脈壁を構成する細胞・間質に存在する水分子が標的となり血管壁で熱に変換され、直接的に血管壁を熱破壊します。 (図2↓)

小さなエネルギーで効率よく血管壁を破壊し閉塞させ、内出血・疼痛などの副作用も少なくなります。

 

血管内レーザー焼灼術の流れ

上を向いて寝ていただき、穿刺部位と焼灼静脈周囲には十分な局所麻酔薬を注入します。更に術中は静脈麻酔で寝ていてもらいますのでほぼ痛みは感じません。

レーザー治療

膝上または膝下で皮膚上より穿刺し①、ここよりファイバーを静脈瘤血管内へ留置します。 大伏在静脈と大腿静脈の接合部②より1-2cm下③からレーザー光線を照射し焼灼治療をはじめ、一定の速度でファイバーを抜きながら穿刺部①近くまで焼灼し、その後ファイバーを抜いて終了です。終了と同時に歩行は可能です。

術後圧迫療法

手術当日は術直後に手術室にて、大伏在静脈の走行に沿って皮膚上からスポンジをあて、その上につま先から足の付け根までの長さの弾性ソックスを履き,更に太ももには弾性包帯による圧迫を加えます。
翌日スポンジのみ取り除き、弾性ソックスと弾性包帯圧迫は終日で術後5日間継続してもらいます。その後は弾性ソックスのみの圧迫を昼間のみで、術後約1ヶ月間続けていただきます。
退院後は弾性ソックス着脱と弾性包帯圧迫はご自身で行なってもらいます。
シャワー浴は手術翌日より、入浴は術後5日目より可能です。

 

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