ハートラインNo.3 音楽療法とは

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  1. 音楽療法とは
    音楽療法は一言でいえば、音楽による心理療法ということができます。言葉では表現できない何か、言葉を超える何かをクライエントと共有し、そのことでクライエントが成長し、またはそのことで自己治癒力が増進する、またはクライエントのQOL(生活の質)が向上するというのが音楽療法といえましょう。
  2. 音楽療法の現状
    わが国の音楽療法は、チェリストであり、音楽療法家であったAlvinの、1960年代の来日を期に導入されたといわれています。ここ数年、わが国では音楽療法は急速に広がり、2004年3月には、日本音楽療法学会認定の音楽療法士が943名になりました。音楽療法士養成のための教育機関も整備されつつあります。現在、日野原重明氏が会長を務めるこの学会の会員数は約6000名にいたり、学会では、音楽療法士の身分保障のために、国家資格獲得を目指し、率先して音楽療法の効果研究に取り組んでおり、evidenceに基づく効果立証を急務としています。
  3. 音楽療法の形態
    音楽療法の形態は以下の4つに大別されると考えられます。
    1)鑑賞する(アセスメントの結果、選曲した既成の曲を生演奏または録音で聴く)。2)演奏する(既成の楽曲を歌ったり、楽器演奏をする、また、即興で歌ったり、演奏したりする)。3)身体を動かす(既成の曲や即興の曲とともに身体を動かす)。4)創作する(クライエントが作詞、作曲したり、また身体表現動作を創作する)。このような音楽療法の形態は、通常組み合わせて用いますが、対象者によって組み合わせ方は多少異なってきます。例えば、医療現場では鑑賞する形態が多くなるし、障害児、高齢者のセッションでは演奏したり、身体を動かすことが多くなっています。勿論、これらの形態はMTとクライエントが1対1である個別セッションでも、複数のクライエントで行う集団セッションの場合でも同様に用いられています。
  4. 音楽療法の対象
    音楽療法実践家に対するアンケート調査によると(村井、2000)、わが国の音楽療法実践家は障害児・者を対象としているものが50.5%、高齢者は38.4%、成人は11.1%となっています(N=3393)。障害児は知的発達障害児への音楽療法が多くなされ、成人では統合失調症の患者への音楽療法が多くなされています。
    ここでは高齢者への音楽療法を中心にお話していきましょう。わが国の高齢者への音楽療法は、ほとんどが痴呆高齢者のための集団音楽療法です。私は長年、痴呆高齢者に「なじみの歌法」を実施し、その効果を見てきました。なじみの歌法とは「なじみの歌」歌唱により呼び戻されてきた記憶や感情を痴呆性高齢者と共に語るという活動的回想音楽療法の一方法です。痴呆性高齢者の残存能力である長期記憶に働きかけることを中心とする方法です。さっきご飯を食べたことも忘れるような痴呆性高齢者であっても、「なじみの歌」は歌詞を見なくても最後まで歌える人が多いのです。約800人の高齢者への「なじみの歌」調査によると、「なじみの歌」とは好きな歌50%、よく歌った歌24%、思い出のある歌17%、歌いたい歌8%の順でした。なじみの歌の順位は、1位が「北国の春」で、美空ひばりが好きな歌手の第1位でした。「なじみの歌」のジャンルは、49%が歌謡曲であり、性差、学歴差により、ジャンルに違いが見られました。また、「なじみの歌」から呼び戻される記憶、感情は、約8割が肯定的感情でした。
  5. 痴呆高齢者に対する音楽療法の効果
    これまで解明されてきた痴呆高齢者に対する音楽療法の効果としては、心理学的指標では、a)社会的行動の増加、b)攻撃行動の減少、情緒の安定、c)抑うつ症状の軽減、d)摂食行動の増加など、生理学的指標では、a)入眠効果、b)NK細胞の増加などがあげられます。最近、私たちの研究により、痴呆性高齢者への音楽療法の長期間の持続効果もわかってきました。 音楽療法に参加しなかった人は、参加した人と比べて、1年間で統計学的に有意に収縮期血圧が上昇しているのです。音楽療法に参加した人は、収縮期血圧、知能指数、コルチゾール値において、約1年前の状態を保つことができました。このことによって、音楽療法には心疾患や脳疾患の予防効果があることが示唆されました。
    私はダジャーレ守谷で月に2セッションを行ってきて、はや5年になろうとしていますが、毎回お年寄りの笑顔に触れて、こちらが元気をいただいているように思っています。

高橋多喜子:「音楽療法概説」日本補完代替医療学会誌第1巻より一部転載

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